人間と世界――このふたつの言葉とともに人間の生活が、世界の諸様相が、また、社会が、さらに風景が、大地が、姿を見せる。日常生活と風景、しかも人間の風景が、クローズ・アップされてくるのである。人間にとって世界は対象ではなく、舞台であり、生活と生存の領域、おおいなるトポスなのだ。
生活をもつ風景――これは日本画家、鏑木清方の表現だが、人間の生活と姿が、そこはかとなく漂っている風景、日常生活がどことなく滲み出ている風景は、私たちにとって気がかりな、魅力的な風景ではないだろうか。人間それ自体が、このうえなくみごとな眺め、風景として視野に浮かび上がる場合がある。いたるところ風景、まさに風景は、いずこにおいても、人間の生活・生存圏となっているのであり、シェイクスピアが、すべてこの世(世界)は舞台といった、そのような舞台は、ときとところを問わず、風景、風景的世界として立ち現れているのである。
風景は、人間の生活の舞台背景ではない。舞台そのものなのだ。私たちは、人びとをただ風景としてしか眺めているわけではない。〈まなざし〉や言葉や手などによって、人間と人間とのあいだに、さまざまなコンタクトやコミュニケーションが生まれるのである。だが、人間は、まちがいなくみごとな風景なのだ。
人間は、いつも風景のすばらしい点景であり、大きな風景なのだ。一人の人物がそこに姿を現したとき、あたりの様子が、状況が変わってしまう。人間とは気配そのもの、雰囲気的なものなのである。(エピローグより)
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プロローグ
T 谷戸の風景
1 1999年、谷戸の煙
2 土――畑と谷戸と土手
3 〈からきだの道〉
4 畑
5 新緑の谷戸
6 緑、そして新緑
7 谷戸と山ノ端
8 大地と谷戸
U 晴れの日
9 開学式――1999年11月6日
10 紅白の幔幕
11 卒業式
12 地鎮祭
13 辞令伝達式――2001年4月2日
V 人間について
14 人間
15 人生の旅びと、人間
16 人間の生活
17 人間と人間――さまざまなシップ
18 人間的秩序
19 教育について
20 バルザックと人間学
21 人びとのなかで、他者にたいして
22 誕生日――1月26日
W 人間と生活と
23 戴帽式
24 贈物――カーネーションの日
25 ジンメルの〈まなざし〉とアプローチ
26 人間と人間の関係の諸様相 ――ジンメルの 〈まなざし〉
27 人間
28 歩く
29 街頭風景――ポーの群集の人
30 孤独と群集と
31 手のスペクタクルとドラマ
32 人間の手――ヴァレリー、そして
33 人間の手
34 右手と右手――人間と社会の原風景
35 芸術――中原中也の芸術論ノート
36 視覚と触覚、救いの手
37 耳――寅彦/コクトオ/大学
38 携帯電話と人間
39 声
40 漱石
41 世の中に住む/漱石
42 義務と好意――漱石、修善寺の記憶
43 木曜会――友情の交響楽
44 西田幾多郎とドストイェフスキイ――人間の理解をめぐって
45 人間存在――和辻哲郎のアプローチ
46 故郷――花鳥山水風月
47 われ思う、ゆえにわれあり cogito, ergo sum
48 人間の社会――コントとアラン
49 記念と回想――コント、アランとともに
50 生活世界の諸様相――フッサールと
51 西部劇、映画「真昼の決闘」
52 映画「真昼の決闘」――人間関係のドラマ、時間のドラマ
X 日常生活の場面
53 ホモ・エスペランス――生活の場面と人間
54 生活/パースペクティブ
55 暮らしの場面――言葉と行為
56 開放的な都市、閉ざされた町
57 秘密の生活――デカルト/グルニエ
58 晩夏、記憶のスクリーン――へルマン・ヘッセとともに
59 少年、トゥリヨ――ヘッセの幸福感
60 食事の場面と文化――ジンメルの視点
61 食事について――ベンヤミンとともに
62 明るい空間と暗さの体験
63 夜の音――七二会小学校、学級通信「峠」
64 台所の音――幸田露伴と幸田 文
65 公共空間と音――車内広告「気をつけて、音」
66 横浜線
67 昭和館
68 釣堀
69 市人の暮らし――鏑木清方のモチーフとアプローチ
70 清方の「朝夕安居」/ 朝――庶民の生活の情景、風景
71 「朝夕安居」/ 昼の景色と夕景
72 乱歩とロビンソン・クルーソー
73 三宅一生の空間と時間――衣服・服装のドラマ
74 陶芸作品
Y トポスの様相
75 漱石――馬場下、界隈
76 武蔵野へ――独歩と渋谷
77 山小屋――山林弧棲の光太郎
78 三角は飛ぶ――クローデルと柳田国男
79 なまこ壁――三田の山/演説館
80 大都市の風貌と町の姿/道路社会学――奥井復太郎のアプローチと景観論
81 島・地域性、都市へのアプローチ――奥井復太郎のパースペクティヴ
82 天使のラッパ――デュアメルと尾崎喜八
83 住宅地――丁字と会話
84 屋根裏部屋
85 窓/ピクチャー・ウインド
86 リューベックとトーマス・マン――精神的生活形式としての
87 公園をめぐって――客観的精神
88 食料品売場/市場
89 中庭、住吉の長屋――安藤忠雄のアプローチ
90 家、その内部と外部――ふたたび住吉の長屋
91 故郷の断片――"原風景"/こども
92 原っぱ――原風景をめぐって
Z 旅をめぐって
93 ペイネ、恋人たち
94 ベルナール・ビュッフェ
95 いわさきちひろ――紫色/こども
96 安野光雅の画風
97 上野駅
98 蒸気機関車
99 駅舎と待合室
100 道と山――風景の様相
101 浄瑠璃寺
102 塔――佐原六郎先生と西脇順三郎先生
103 仏頭と仏手
104 若草山
105 阿修羅とともに
106 京都、太秦、広隆寺の仏像
107 修善寺
108 鎌倉、新緑
109 花野
110 ボタンヅル/旅人のよろこび――西脇順三郎、英文学と雑草
111 石
112 日時計/回想
113 ヘルダーリンのテュービンゲン
114 アクロポリス/アテナイ
115 トスカーナ TOSCANA
116 トスカーナの丘、多摩の丘
117 ヴェネツィア
118 ヴェネツィア――イマージュの都市
119 風景の眼――ヴェネツィア/バラージュ
120 シチリアへ――時の香り
121 プロヴァンス/讃歌――ジャン・グルニエとともに
122 LA MIRANDE――アヴィニョンで
123 ペトラルカとヴァントゥウ山
124 ジャン=ジャック・ルソー――水と緑とすばらしい景色
125 ル・モン=サン=ミッシェル
126 フォンテーヌブローの森――ミシュレとともに
127 コンブレーのふたつの散歩道――イリエ=コンブレー
128 シャルトル――ステンドグラスと「日時計の天使」
129 ジヴェルニーのモネ
130 「鳥の群れ飛ぶ麦畑」――ゴッホの空と麦畑、道
[ パリ――スぺクタクルとパースペクティヴ
131 パリ
132 ポスターのパリ/パリのポスター
133 パリ――パースペクティヴT
134 パリ――パースペクティヴU
135 パリ――パースペクティヴV
136 パリ――パースペクティヴW
137 パリ――パースペクティヴX
138 パリ――パースペクティヴY
139 マネのパリ/パリの生活と風俗――パースペクティヴ?
140 ポン・ヌフ、パリ――ルノワールの〈まなざし〉
141 サン=ルイ島――アンリ・ルソーとともに
142 ブランクーシと石、無限柱
143 道の表情について――パリ、ベンヤミン、ホーフマンスタール
144 〈まなざし〉――パリ、ボージュ広場
145 パリのキャフェ
146 エッフェル塔
147 パリのメトロ
148 バルザック
149 街路/パサージュ――ベンヤミンのアプローチ
150 杖――パリでのベンヤミン展
151 パリ/風景/遊歩者――ホーフマンスタールとベンヤミン
152 サン=ラザール駅
153 ウェルギリウスの蜜蜂/ミシユレ――ペール・ラシェーズにて
154 空
155 リュクサンブール公園――荷風、生きた詩
\ 道と人間、人間の生活
156 地図と風景
157 道の歴史
158 道しるべ
159 坂道
160 七二会
161 道端/庚申塚/七二会/トポス
162 雪道――日本人の色彩感
163 旅は道連れ世は情――蔵内数太と社会学
] 自然と人間と人間の生活と
164 ヘルマン・ヘッセと雲の眺め
165 青い空――阿多多羅山
166 虹
167 鶴見川
168 千曲川
169 薔薇――匂いと香り
170 世界の匂い――デュアメルとミンコフスキー
171 水中花
172 雪
173 雪野
174 冬場・雪国と雪
175 ふるさと
176 水田
177 八海山/山本山
]T 絵画と人間
178 絵画と呼ばれる人間の営み、試み
179 芸術と人間、そしてプルースト
180 絵画の驚き――〈まなざし〉のドラマ
181 〈まなざし〉と花と宝石と――絵画のエッセンス
182 人間の風景、風景的世界の光景――レオナルドと「モナ・リザ」
183 花
184 家族的現実/繭あるいは巣、揺藍――ピーテル・デ・ホーホの絵
185 都市景観――ウィーンの場合
186 水と花のオフェーリア――サー・ジョン・エヴァレット・ミレーのシェイクスピア
187 向きとパースペクティヴ――顔と目・瞳・〈まなざし〉と耳
188 ゴッホ「じゃがいもを食べる人びと」
189 「種まく人」とゴッホ
190 色/藍
エピローグ
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