すべての現代哲学者の中で、自分が誰に知的な恩恵を受けているかということについて、ウィトゲンシュタインは、おそらくもっとも無頓着な人物であったと言えるだろう。ウィトゲンシュタインの用語や思想の多くは、他の哲学者に由来しているということは確かだが、彼の著作や諸論文には、まったくと言ってよいほど、注や引用文や文献の出典に関する情報は含まれていない。彼は、他の思想家との関連を「ほとんど隠すのに努力したと言っていい」ように見えるのである。実際ウィトゲンシュタインはしばしば、故意に「他の人々の著作に通じていないことに、注意を向けさせようとした」。このようにして彼は、その哲学が無から生み出された超天才であるという誤ったイメージを作り上げるよう、もくろんだのだ。
ウィトゲンシュタインとショーペンハウアーとの関係は、特に奇妙である。ウィトゲンシュタインの哲学的な思索においてショーペンハウアーは生産的な役割を演じたにもかかわらず、公刊物のいずれにおいても、彼はショーペンハウアーの名前を挙げてはいないのである。彼が私的なノートや日記(『草稿』)や会話でしか、ショーペンハウアーからの恩恵を認めていないのは、不思議なことである。
(本文より)
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はじめに
序 論 ウィトゲンシュタインの不安
第1章 言語と哲学
第2章 世界の喪失
第3章 永遠の現在
訳者あとがき
原注
訳注
参考文献
索引
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